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お見舞い++

男……セリフ数19。怪我をした彼女のお見舞いに来ている。
女……セリフ数19。事故により半身不随となった。


男01「お邪魔するよ」
女01「……何だ、来ちゃったの」
男02「来ちゃったの、じゃないよ。
  キミをこんな風にしてしまったのは、
  元はと言えば僕のせいなんだから」
女02「そうね、貴方のせいよね」
男03「だからこうして、お見舞いに来て――」
女03「いらない」
男04「――えっ?」
女04「いらないから。貴方のお見舞いなんて、いらないから」
男05「どうしてさ! 僕のせいでこうなってしまったんだ!
  だから僕がキミに尽くすのは――」
女05「それを自分勝手って言うのよ」
男06「自分勝手……、そんな言い草――っ」
女06「ねぇ、私の怪我の程度、知っているんでしょ?
  私、もう二度と歩けないんだって。
  ずっと車椅子での生活をしなきゃならないんだってさ。
  貴方がヘマをしなければ、きちんと運転していれば、
  私がこうならなくて済んだ……」
男07「そうだよ、だから――」
女07「貴方と付き合わなきゃ良かった」
男08「えっ――?」
女08「貴方とさえ出会わなければ、
  こんな怪我をせずに済んだの!
  こんな事がなければ、今頃は悠々と学生生活を
  謳歌(おうか)していたわ!
  なのに……、なのに……っ」
男09「…………っ」
女09「出てって。そして、二度と私の前に現れないで」
男10「い、いきなりそんな事言われても――」
女10「貴方は私の人生を滅茶苦茶にした!
         だからよっ!!」
男11「あぅ……」
女11「……あの日に戻りたい。
  もう一度自分の足で大地を踏みしめたいよぉ……」
男12「……出来る。絶対にそういう日は来る」
女12「そんな気休めいらないから! だって私は……」
男13「僕は諦めない。
  たとえ、一生かかっても、キミをもう一度、
  歩けるようにしてみせる」
女13「ははっ、おとぎ話みたいなこと言っちゃってさ」
男14「今はおとぎ話でも構わない。
  でも、僕はどんな手段を使ってでも、キミを歩かせるよ」
女14「……どうやってよ」
男15「その為には、たくさん勉強する。
  いい大学に入って、いい研究をする。
  そして、どんな大怪我した人でも歩けるような技術を、
  開発してみせる」
女15「…………っ」
男16「だから、見ていて欲しい。
  僕は素晴らしい研究をしてみせる。
  そして、いつかはキミが再び大地に足をつける事の
  出来る日を、実現させてみせる――」
女16「……それ、期待してもいいの?」
男17「あぁ、期待していてくれ」
女17「あは、あはははははは!
  おとぎ話よね。都合の良い話よね、それ」
男18「僕はおとぎ話では終わらせない」
女18「その妙な自信はどこから来るんだか。
  でもまぁ。貴方のそんな空想話を聞いてると、
  何だか本当に実現させてしまいそうだわ。
  ……その夢、おとぎ話で終わらせないでね」
男19「……あぁ、絶対にだ。実現させてみせるよ」
女19「うふふ、ウソでも有難う。
  何だか元気というか、肩の荷が軽くなった感じ。
  私も、そんなおとぎ話に、付き合ってあげるわ……」

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